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組織行動論1-4 組織文化と戦略的な組織変革

組織の発展プロセスと組織学習
目次

組織文化と戦略的な組織変革

企業の売上や事業シェアの拡大に伴い、必要になる経営資源は飛躍的に大きくなっていきますが当初に組成した組織の枠組みに経営資源を投下していくだけでは継続的な成長は難しくなります。企業は、戦略的な組織変革を実行することによって目まぐるしく変わる事業環境に長期適応していくことになります。

戦略的組織変革とは、組織の戦略、構造、文化、プロセスなどを抜本的に変革することですが、その鍵は組織文化の意図的な変革、すなわち学習する組織への変革を総合的に行うことです。

組織文化

多くの場合は、企業や組織にはその企業特有の「雰囲気」を持っています。これらは多くの場合、企業や組織の中で共有されている価値観や信念、理念やルールなどによって生み出される行動パターンの集合体であり、これらを組織文化といいます。

組織文化は、行動パターンのルールやそれらをベースにした判断やコミュニケーションのルールを提供し、目標に向かって組織全体でやり遂げようとする強力なモチベーションを生み出し、そのために協力しあう一体感を高める効果があります。

この組織文化が極めて強く出ている組織や企業は、人材を雇用する際の人選が著しく偏ったり、あるいは組織文化になじめずに早期退職につながるケースもあるため採用戦略上も重要なものになります。

強い組織文化の形成要因

  1. 組織メンバーが物理的に近接していること
  2. 組織メンバー間の同質性が高い、つまり、性や年齢、学歴、職歴などの特性、興味や関心が似通っていること
  3. 組織内のタスクが相互依存関係(つまり協力し合う関係)にあること
  4. 同質の情報を組織内に満遍なく伝達できるコミュニケーション・ネットワークが発達していること
  5. 研修、会社主催の行事、社是・社訓の徹底など組織文化の浸透と組織メンバーの帰属意識を高揚させる技法がとられていること

協力な組織文化は組織的な目標に対する一体感を高めるという効果がある一方で、組織メンバーに対する同調圧力(斉一性への圧力)を通じ、思考様式の均質化や組織の硬直化をもたらす場合があります。これらをただ放置するのではなく、組織文化の積極的なマネジメント、すなわち組織変革や組織開発が必要になってきます。

組織活性化の方策のひとつであり、環境変化に効果的に適応できるように、これまでの組織の信条や規範、態度などの変革を意図した複合的な教育戦略である。その方法には、教育訓練方式とコンサルティング方式の2つがある。

組織開発では、メンバーの無関心度を低め、一体化度を高めることになる。一体化度とは、組織の構成員の価値観や目的が組織の理念や目的とどの程度同一であるかという程度を表すものである。また、無関心度とは、無関心圏の大きさ、すなわち、命令に対してどの程度受動的に行動するかという程度を表すもの。

組織学習

組織文化は組織学習の結果、生まれてくるものとされています。

組織学習の結果は、組織メンバーの個人の経験や知識、組織のなかの規則や慣行、経営理念、教育訓練プログラム、組織文化として組織内に蓄積され、伝承されていく。また、組織学習は、組織の発展プロセスに応じてその必要とされる内容が異なってくる。

組織の発展プロセス

組織の発展プロセスは、それぞれの段階における漸次的進化過程と、ある段階から別の段階に飛躍する革新的変革過程という2つのタイプの変化プロセスが交互に組み合わさって成立しています。

漸次的進化過程 それぞれ安定した段階において進行する継続的な改善の積み重ね
革新的変革過程 組織が必要に迫られ次の段階へ移行していくための不連続な変化

企業や事業の成長・環境に合わせてそれまでの戦略や組織では対応できなくなってしまった際には、それまで引き継いできたものの発展(延長線上)ではなく、全く新しいその時の状況や環境に合わせた再構築を行う必要があるということです。

低次学習と高次学習

組織学習には、低次学習と高次学習があります。低次学習とは漸進的な学習であり、主にシングルループ学習既存の制約条件・枠組みの中で行う修正・学習活動)を指します。

一方、高次学習とは断続的な学習であり、組織全体に影響を与えるような学習やダブルループ学習既存の価値や目標、制作などの枠組みを超えて行う学習活動)を指します。

つまり、漸次的進化過程に対応するのが低次学習であり、革新的進化過程に対応するのが高次学習です。

組織の発展プロセスと組織学習

組織の発展プロセスと組織学習

組織学習への制約

組織学習は、次の図のようなサイクルに沿って行われます。

  1. ある行動(組織行動)をとった結果得られた成果を分析し、個人レベルの信念や知識に修正が加えられ、学習した個人は個人レベルで何かしらの行動変化を促す。
  2. そのような個人レベルでの行動変化が組織レベルでの行動変化をもたらし、それに伴い組織は新しい行動を展開する。
  3. 組織レベルでの行動結果が優れた成果に結びつく
  4. 組織における個人の信念は強化されます

③において低い成果しかもたらされない場合には、その信念は棄却され、新しい信念が形成される契機となります。

組織学習サイクル

組織学習サイクル

ただし、これらの組織学習サイクルは不完全になってしまったり、革新的な変化には向かわずに漸次的進化ばかりに意識が向かってしまうことが多いのが実情でその理由としてあげられるのが組織の安定的な段階におえる下記4つの傾向になります。。

役割制約的学習(①の断絶) 与えられた役割規定や手続き上の制約によって、個人が具体的な行動に出ることができない状態
傍観者的学習(②の断絶) 個人の学習成果が組織の次の行動に活かされず、個人が傍観者と化している状態
迷信的学習(③の断絶) 学習は行われ、個人が組織の行動に影響を与えるが、組織の行動は環境に何ら作用しない状態(人々は作用すると思い込んでいる)
曖昧さのもとでの学習(④の断絶) 個人は組織の行動に影響を与え、それが環境にも作用するが、個人には何が生じたか、なぜそれが生じたかが判然としない状態

これらの要因としては、組織ないし個人の認知的枠組みの固定化、組織ルーティンの存在、分業化による部門間の垣根の存在などがあげられます。

組織ルーティンとは、組織の行動プログラムであり、公式の文章として制度化されている諸規則・手続き、組織構造、組織文化などの形態をとる。

戦略的組織変革

環境が不連続な変化を起こしたとき、組織は従来の組織能力や戦略を見直し、環境との新たな関係を抜本的に再構築する必要に迫られます。

2020年8月16日現在、世界中の組織がコロナ禍によってまさしくこの戦略的組織変革の真っただ中といえるかもしれません。

戦略的組織変革への抵抗

たとえ業績が悪化して危機的な状況を迎え、革新的(戦略的)組織変革の必要性が生じても、実際には実現に至らないことがあります。これには次のような理由が考えられます。

変革には既存の行為を継続する場合には現れないコストが伴うから

①埋没コスト

埋没コストは現在の状況にとどまる限り発生しない為、組織が現状に執着してしまう

埋没コストは、現在のプログラムを継続している限り発生しないコストでありながら、それを捨てて新しいプログラムを採用する場合に発生するコスト。

②組織内外の利害関係者たちによる強い抵抗

既得権益を失うことになる人達は、現在の組織均衡状態を変えるような組織変革に対して、強い抵抗を示す可能性が高い

組織は変革の必要性を認識することができない可能性があるから

①戦略的変革の必要性を示す外部シグナルの排除

既存のビジネスを管理・運営するために構築されているルーティン化に直接関係を持たない情報やデータを排除してしまう傾向がある

②有効性のわな

組織やその利害関係者たちが満足水準を超える利潤を得ており、取り立てて不満がないという状況では、あえてより良いプログラムや戦略を探索しようとする動機づけが失われてしまう。

たとえ業績が悪化しても、なお既存の行為を継続しようとする強い力が作用するから

①失敗に対する責任を認めることでの心理的コストの上昇

経営者や管理者は、新しい行為よりも従来の行為にコミットしてしまう

②従来の行為を追い続ける

従来の行為を止めることで新たに埋没コストが発生するのを防ごうとして、成功を期待して従来の行為を追い続けてしまう

③慣れ親しんだ対応を選択

失敗によって損失が生じ、環境から脅威がやってきた場合、組織は従来慣れ親しんできて、経験も豊富な対応の方を選択する傾向がある

④データの重要性の過小評価や不適切な解釈

管理者が適切なデータを入手できても、そのデータを解釈する認知枠組は既存の組織文化に依拠しているため、それらの重要性を過小評価してしまったり、不適切な解釈をしてしまったりする可能性が高い

戦略的組織変革の遂行

変革の必要性の認識

変革にあたっては、まず経営者もしくは経営者グループによって変革(高次学習)を創始する必要性が認知されなければなりません。そのためには、組織の既存の情報処理手続きによって加工された情報ではなく、よりリッチな情報を獲得し、経営者は自身の責任でその意味するところを解釈しなくてはなりません。

リッチな情報とは、いままでにないような多様な解釈(意味・教訓)を導き出せる程度が高い、すなわち潜在的多義性が高い情報(経験)のこと。

リッチな情報を獲得し、効果的な解釈を行うための条件
  1. 現在の日常業務で使われていない、変革のために利用可能な組織的なスラック資源(余裕)を保有すること→これがないと多様な解釈をする余裕がなくなる
  2. 既存の情報処理手続きによって加工されておらず、多様な解釈が成立し得るのデータへ直接コミットすること(生のデータへアクセス)
  3. 組織の既存の手続きや、貴族では処理できない問題が発生していることを示すシグナルであるコンフリクトを多様に解釈し、根本的な原因を探索すること

変革案の創造

組織の問題が認識され、特定の個人が立地な経験を通じて革新的なアイデアを創出したら、それを組織レベルの知識創造過程にのせ、明示的な革新を生み出していく必要があります。

組織における創造過程に影響を与える条件
  1. 情報の多義性を増幅してリッチな解釈をするために、関連する多様な領域、バックグラウンドを持つ人々からなる自律的組織単位を編成する
  2. 革新的なアイデアは、多くの場合暗黙知の形態をとるがフェイス・トゥ・フェイスの対話を通じて、ある人がもつ暗黙知を組織的に共有したり、新たな形式知を創造したりするといった取り組みが求められる。※今日ではITを活用したナレッジマネジメントも活発に行われている
  3. それぞれのメンバーは、事故の専門領域を持ちつつも、組織全体に関する知識や情報を共有していなければならない  このような状況は、各メンバーがつねに組織全体のことを考えつつ、専門的な意見を主張することを可能にする。※このような各メンバーが重複した情報をもつことを(情報の)冗長性という。

ナレッジマネジメントとは、IT技術などを活用して、各組織構成員が保有している各種暗黙知を形式知化して結びつけることで、新しい価値を創造し、組織的に共有していく取り組み。

変革の実施・定着

組織変革には混乱や既存組織からの抵抗、変化に端を発した新たな組織内の権力抗争が伴うため、これらへの対処は必須となる。

基本的な対策は、移行過程のマネジメントを専門に担当する管理者およびチームを結成し、トップマネジメントがそれを支援することです。

ここでトップに求められるのは、組織に学習する価値観を埋め込むという制度的リーダーシップです。

セルズニックによれば、組織はもともとタスクを遂行するための手段であるが、そこに独自の価値が注入されたとき制度となる。制度的リーダーシップとは、組織の独自の価値観を注入し、組織全体を率いていくリーダーシップ。

 

 

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この記事を書いた人

遅咲きの桜の物語

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