製品アーキテクチャという概念は、製造する製品を機能的要素と構造的要素に分けて設計要素(コンポーネント)に分割し、それぞれの構造と機能とそれらの関係性を形式的にとらえる概念です。
TAC出版の中小企業診断士の教科書(上)では以下のように記載されています。
どのようにして製品を構成する部品を分割し、そこに製品機能を配分し、それによって必要となる部品間のインターフェースをいかに設計・調整するか」に関する基本的な設計思想。
製品アーキテクチャには大きくモジュール(モジュラー型)とインテグラル型の2種類があります。
モジュール化(モジュール型アーキテクチャ)
モジュール化とは、全体システムを明確に定義されたインターフェースにより、相互調整が不要となるような下位システム(モジュール)に分解するという設計思想。これは定義に収まっている限りは、それぞれのモジュールは他のモジュールに影響を及ぼすことなくより高度な開発を行うことが可能となるわけです。
CPU,OS,ディスク,RAMといったパソコンの部品はモジュール型アーキテクチャの身近な例となりますが、それぞれのモジュール毎に沢山のメーカーが代替可能なものを作っており、その中にも品質や性能に違いが発生しているものの、規格が同じものであればどれを使ってもパソコンそのものはしっかりと作動するという形を可能にしているのがモジュール型アーキテクチャとなります。
モジュール化のメリット・デメリット
メリット
- 構成要素間の調整等にかかるコストを削減できる
- モジュールの独立性が確保されると、全体に対する変化を部分(モジュール)に集中することができる
- システムの多様性を容易に確保できる→さまざまな組み合わせが可能である
デメリット
- 各モジュールの独立的な開発を促すためにはインターフェースを長期間固定しなくてはならないため、インターフェースの進化が抑制される
- 幅広いモジュールを扱うには、インターフェースに汎用性をもたせなくてはならず、結果、全体システムに無駄が生じることになる(全体システムが無駄を許容できることが前提)
インテグラル型アーキテクチャ
インテグラル型アーキテクチャは、モジュール型アーキテクチャの対語として使われる製品アーキテクチャの区分。製品やシステムを構成する要素同士が密接に結び付いたアーキテクチャのため、全てのまとまりが美しく完成度も高くなるが、何か一つを変える必要が出るとすべてに変更を加えなければいけなくなってしまうデメリットを持つ。
TAC出版の本には、以下のように記載されています。
製品の機能が複数のコンポーネント(部品)にまたがって複雑に配分されており、コンポーネント間のインターフェースも事前に標準化されていないような製品設計思想のことをいいます。その結果、モジュール型のアーキテクチャとは異なり、1つのコンポーネントに変更を加えると他のコンポーネントすべてに変更を加えなくてはなりません。
インテグラル型のメリット・デメリット
メリット
- 製品としてのまとまりのよさ(プロダクトインテグリティ)を追求でき、小型化製品や軽量化製品の開発に適している
- システム全体の最適設計が可能になる(無駄のない全体システムの設計が可能)
- 構成要素間に相互依存性があるため、システム全体の模倣が困難になり、持続的な競争優位性が確保できる
デメリット
- 構成要素間に相互依存性があるため、調整(擦り合わせ)コストがかかる
- 部品の変更によってシステム全体の変更を促すケースが発生する
- 上記の結果、システムの多様性を追求しにくく、進化に時間がかかる
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