中小企業診断士

技術経営1-2 イノベーション

技術進歩のS字カーブ

※イノベーションは技術革新に限られることはないものの、ここでは技術分野に焦点を当てている形となる。

イノベーションの定義

イノベーションとは、創造的なアイディアを実行し企業に新しい利益をもたらす変革のことをさし、経済学者のシュンペーターによって提唱されたコンセプト。彼はイノベーションを「新結合」の遂行だとし、次の5つを挙げている。

  1. 新しい生産物または生産物の新しい品質の創出と実現
  2. 新しい生産方法の導入
  3. 産業の新しい組織の創出
  4. 新しい販売市場の開拓
  5. 新しい買い付け先の開拓

イノベーションの類型

イノベーションの類型は以下の4つ。

プロダクトイノベーション

これまで存在していなかった新製品の開発、または開発するための技術革新。プロダクトイノベーションの例として誰もが知っているものとすればSONYのWALKMANやappleのipodやiphone、ipad。他にもkindleなどの電子書籍リーダーなどもそうですが、今であれば当たり前に存在しているものはそれらが生産される前までは全く想像すらしなかったようなもので、一度その新しい世界に触れるとそれがない世界にはもう戻れないほどの衝撃と感動を生み出すものです。

プロセスイノベーション

既存製品の生産工程や技術を改良すること。成功したかどうかは置いておくとしても直近で行われたプロセスイノベーションの例としては、ZOZOSUITなどが記憶に新しいですね。複数のプロセスを一気に簡易にすることができる(はずだった)プロセスイノベーションです。

アパレル商品は、特定のサイズに合わせて大量生産したものを販売する、というのが従来のアパレルメーカーでしたが、ZOZOSUITで自宅でサイズを継続すればその人個人の寸法に合わせた服をセミオーダー服のように作る、という画期的なものでした。

また、寸法を測って服を作るという領域は、本来はオーダー服やオーダースーツのように店舗に赴きプロ(または店のスタッフ)に寸法を計測してもらった上で作ってもらうプロセスでしたが、ZOZOSUITの場合は、顧客が家にいてZOZOSUITを着るだけで寸法がとれる(はずだった)ので、店舗に赴く必要がないという意味でもイノベーティブなものでした。

インクリメンタルイノベーション(持続的イノベーション)

既存製品の細かな部分改良を積み重ねる技術革新。個人的にはインクリメンタルイノベーションは一番捉えどころがないものと感じてしまうのですが、これはとりあえず真面目に商品開発に携わっている限りは当たり前の行動だからだともいえると思います。

製品を開発する場合、ほとんどの場合はターゲットとなる顧客層がその製品に何を求めているか?を把握した上で作られるわけですが、まず第一にはその最も求められているものをより良いものにするというのがポイントです。結果的に、顧客が一番求めていることを改良し、さらに良いものとすることによってさらに顧客の信用を獲得(シェアを獲得)することにつながる形です。

それ以外にも、顧客からのフィードバックを製品に反映させるために細かい改良も持続的に行うことになります。

つまりインクリメンタルイノベーションと(持続的イノベーション)とは、顧客がその製品に求めていることをより良い形で実現するための技術革新と言えます。

ラディカルイノベーション(破壊的イノベーション)

従来とは全く異なる価値基準を市場にもたらす(既存の製品・サービスの存在意義そのものを脅かすような)イノベーション。

iphoneはドラスティックにプロダクトイノベーションでもあり、その多機能性により他の産業に対しても全方位的に破壊的イノベーションだったといわれていますね。

直近でいうと日本国内ではUber Eatsの印象が強いのであれですが、Uberは世界的にみればタクシー業界に与えたインパクトは破壊的でした。

イノベーションの進化と普及

技術進歩のS字カーブ

技術向上を目指しても市場に受け入れられない場合などを除くと、一定の水準以上に市場が出来上がっている製品に関しては、その製品を開発するために使われている技術が存在し、その技術の開発のために企業は経営資源を投下しているはず。

その技術は、企業が投資を始めてから最初はあまり向上せず、だんだんと成果が出始めてから一気に加速し、また鈍化するという波形を描くことがあり、それを技術進歩のS字カーブといいます。

技術進歩のS字カーブ技術進歩のS字カーブ

技術革新の非連続性

S字カーブを描く技術進歩が、後発または別の技術に取って代わられてしまうイノベーションライフサイクルが発生する場合、このS字カーブのグラフではどのような見え方をするのか。その答えが「技術革新の非連続性」です。

後発の技術体系が既存の技術体系を追い越す場合、それぞれのS字カーブは非連続の(つながりがない)場合がほとんどです。またこの交代が発生した場合には主役である企業そのものも交代することも多いと言われています。

その理由としては革新者のジレンマがある。これは既存の技術でマーケットシェアを獲得したリーダー企業が、その技術に固執し、技術の老化や新技術の存在に気が付けないなどが挙げられている。

また既存の製品のトップシェアを誇るリーダー企業が自らそのマーケットを破壊してシェアを更に伸ばそうという動きは取りにくく、どうしても持続的イノベーションの確立に動いてしまいがちであるといえるでしょう。

技術革新の非連続性技術革新の非連続性

革新者のジレンマ(イノベーションジレンマ)

革新者のジレンマ(イノベーションジレンマとは)

これは既に前述してしまいましたが、革新者のジレンマとは、既存市場でシェアを獲得した企業は、そこから最適な市場シェアを維持しつつ、顧客から上がってくるフィードバックを活かして既存製品の改良に力を使うことになります。これは持続的イノベーションそのものとなるのですが、この持続的イノベーションに多くの経営資源が投下されてしまうため破壊的イノベーションに対応が出来なくなってしまう状態を指します。

革新者のジレンマ(イノベーションジレンマ)が起きる理由

既存顧客に自社製品・自社製品技術が支持されている以上、それを否定するようなイノベーションを自らおこすことは非常に難しい。

大企業であれば、既存の事業と技術を発展させる事業部と新技術を研究・開発して既存の事業に活かす、あるいは新事業を興すといったことが可能ですが、中小企業となるとなかなかそこまでの経営資源は有していません。

上記のような理由に加えて、顧客に求められておらず既存技術に比べると不安定でレベルも高くない(その時点では高くなっていない)新技術を推し進めるよりも、顧客の要望が顕在化している製品を提供した方が経営効率が高まるわけで、その後どうなるかもわからない新技術の推進は合理的ではなくなってしまうわけです。

体系立てて学ぶ場合は当然のように「なんでやらないのか」「技術革新に力を入れないから淘汰されるのだ」等、外野からいうことは可能ですが、破壊的イノベーションが発生するまでに何十という新技術はイノベーションを興せずに淘汰されているです。そのような競争を繰り返した結果の既存技術体系ですので、そのような不確定要素下における「リーダー企業自らが顧客への新技術の導入を推し進める」難しさは計り知れません。